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Radiohead A Moon Shaped Pool

解説 レディオヘッドの9枚目のアルバム『A Moon Shaped Pool(AMSP)』は、デジタルダウンロ…

解説

レディオヘッドの9枚目のアルバム『A Moon Shaped Pool(AMSP)』は、デジタルダウンロードで2016年5月にリリースされ、多くの期待と注目を集めた。リリース直前には、新曲「Burn The Witch」や「Daydreaming」が公開され、その独自の音楽性と映像表現が大きな話題となった。このアルバムは、過去の未発表曲やライブ曲をスタジオバージョンとして録音することで、バンドの新たな音楽的探求を形にしている。

プロデューサーのナイジェル・ゴドリッチやギタリストのジョニー・グリーンウッドによる壮麗なオーケストラアレンジが際立ち、ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラも深く関与している。収録曲は内省的で深みがあり、複雑かつ繊細な音響が聴き手に多層的な体験を提供する。歌詞では社会政治的なテーマや個人的な喪失感が語られ、多様な解釈を許容する抽象性が特徴だ。

「Burn The Witch」は政治的寓話として集団思考やエコーチェンバーを批判し、弦楽器の不穏な響きが曲全体に緊張感を与える。一方、「Daydreaming」は、失われた楽園を思わせる叙情的なピアノバラードで、個人的な痛みや中年期の不安、愛の喪失を描いている。その音楽的完成度はファンから高く評価された。「Decks Dark」や「Desert Island Disk」などの楽曲も、哲学的かつ感情的なテーマを内包し、聴く者に深い印象を与える。

「Ful Stop」はバンドが長年温めてきた楽曲で、鋭い歌詞と実験的なサウンドが融合した作品。「Glass Eyes」の短いながらも感動的なメロディは、個人の孤独と逃避の願望を伝える。また、「True Love Waits」はファンに長く愛された楽曲が新たに録音され、深い感傷を伴うアルバムの締めくくりとして際立つ。

アルファベット順のトラックリストには、ファンが馴染み深いタイトルが並び、新旧が交差する構成が話題に。このアルバムは、バンドメンバーが関わるサイドプロジェクトの影響をも取り入れ、しかし一貫してレディオヘッドらしい個性を保っている。

『A Moon Shaped Pool』は、憂鬱な空気感と圧倒的な美しさを兼ね備え、リスナーを引き込む叙事詩的な音楽の旅を提供する。過去のレディオヘッド作品の要素を凝縮しつつも、さらに洗練された方向性を示しており、その芸術的価値は時代を超えて評価され続けるだろう。

トラックリスト

1 Burn the Witch
2 Daydreaming
3 Decks Dark
4 Desert Island Disk
5 Ful Stop
6 Glass Eyes
7 Identikit
8 The Numbers
9 Present Tense
10 Tinker Tailor Soldier Sailor Rich Man Poor Man Beggar Man Thief
11 True Love Waits