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Radiohead The Bends

解説 1995年にリリースされたRadioheadの『The Bends』は、バンドのキャリアにおける重要なタ…

解説

1995年にリリースされたRadioheadの『The Bends』は、バンドのキャリアにおける重要なターニングポイントである。本作では、初期作『Pablo Honey』からの成長が鮮明に表れ、音楽的・テーマ的進化を実現した。このアルバムでは、壮大で層の深い楽曲構造が際立ち、ギターのアプローチは一層複雑化し、キーボードも積極的に活用されている。トム・ヨークの作詞も個人的な苦悩から一歩進み、社会的・哲学的テーマに焦点を当てる方向へと明確にシフトした。

アルバムの制作過程は困難を極めたが、プロデューサーのジョン・レッキーやエンジニアのナイジェル・ゴドリッチ(後に長年の協力者となる)との共同作業により、新たな音楽的地平を切り開いた。「Planet Telex」や「Fake Plastic Trees」では、ループやシンセサイザーを駆使した斬新なアプローチが試みられ、ジョニー・グリーンウッドの粗削りなフィードバックと崇高なメロディがバンドのサウンドを唯一無二のものにしている。

アルバムの音楽的特長として、複雑に重層化されたギターサウンド、鋭い歌詞、緻密なアレンジが挙げられる。U2やピンク・フロイド、R.E.M.などの影響が垣間見えるが、独自性を追求する姿勢が一貫している。トム・ヨークのファルセットは感情を引き立て、ジョニー・グリーンウッドのギターは創造的なリフと実験的なサウンドを生み出した。これにより、『The Bends』はスタジアムロックの広がりを持ちながら、知的でアンセム的な一面を併せ持つ作品となった。

批評家たちは、『The Bends』を単なる続編ではなく、バンドが新しい地平を切り開いた革新的なアルバムと評している。「壮大」という言葉がよく用いられるが、それはこの作品が聴く者を感情的にも音響的にも満たすスケールの大きさを持っているからだ。その一方で、陰鬱でアウトサイダー的なトーンも顕著であり、ブリットポップの全盛期とは一線を画している点が評価されている。

『The Bends』は、Radioheadのアーティストとしての成熟を証明し、1990年代の音楽シーン全体を再定義したアルバムとして歴史に名を刻んだ。この作品によりバンドは「一発屋」のイメージを完全に払拭し、次世代の音楽的ビジョンを提示する存在へと変貌を遂げた。この作品こそが、今日のRadioheadという比類なきバンドの出発点であり、その地位を確立したものである。

トラックリスト

1 Planet Telex
2 The Bends
3 High and Dry
4 Fake Plastic Trees
5 Bones
6 (Nice Dream)
7 Just
8 My Iron Lung
9 Bullet Proof … I Wish I Was
10 Black Star
11 Sulk
12 Street Spirit (Fade Out)