
解説
コネチカット州出身のデュオ、Have a Nice Lifeが制作したデビューアルバム『Deathconsciousness』は、その深遠なテーマ、ユニークな音楽性、独自の神話性により、多くの批評家やリスナーを魅了している。このアルバムは、シューゲイザー、ポストロック、インダストリアル、ゴシックロックなど、さまざまなジャンルを組み合わせた作品として評価されており、音楽的・文化的に重要な作品とされている。
音楽評論家ピエロ・スカルフィは本作を「My Bloody Valentineのシューゲイザー・ポップ、Joy Divisionのダーク・パンク、Godspeed You Black Emperorのポストロック、Nine Inch Nailsのインダストリアル、Swansのプロト・ドゥームを融合させた作品」と評し、その異例のハイブリッド性を称賛した。アルバムは2枚組で、1枚目は「The Plow That Broke the Plains」、2枚目は「The Future」というタイトルで構成されている。また、アルバムにはアンティオコスという架空の宗教指導者をテーマにした70ページのブックレットが付属しており、このコンセプトが作品全体に奥行きを与えている。
『Deathconsciousness』は、粗いローファイ録音のサウンドスケープが特徴で、多くの楽曲がリバーブの効いたアンビエントサウンドと重厚なベースライン、工業的なリズムを組み合わせている。曲構成は広大で、ポストロックの影響を受けたじっくりとした展開が際立つ一方、キャッチーな瞬間も含まれている。批評家たちは、特に「The Big Gloom」の壮大さ、「Holy Fucking Shit: 40,000」の容赦ないインダストリアルマーチ、「Earthmover」の終盤に展開する美しいモノトーンのコード進行に注目している。
本作は予算1,000ドル以下という低コストで制作されたにもかかわらず、深遠な音楽的体験を提供することに成功している。主にラップトップの内蔵マイクを用いて録音されたことから、音質はラフながらもその粗さが逆に感情的な深みを生み出している。バンドメンバーであるダン・バレットが述べるように、本作の制作はバレット自身の個人的な喪失感や孤独感から大きな影響を受けており、楽曲の歌詞やトーンにも反映されている。
アルバムはリリース当初、一般的な音楽メディアからの注目はほとんど得られなかったが、インターネットの音楽コミュニティにカルト的人気を博した。その結果、作品は次第に神格化され、オンライン掲示板では「必須アルバム」として語り継がれている。Kerrang!誌は『Deathconsciousness』を「ミームにふさわしい文化的瞬間」と評し、ファン文化の中で特別な地位を確立した。
アルバム全体のトーンは圧倒的に一貫しているものの、一部の楽曲はスタイルの変化に苦戦しているとの批評もある。特に、「The Future」や「Waiting for Black Metal Records to Come in the Mail」ではテンポや構成が他のトラックほど緻密ではないと感じるリスナーもいる。しかし、そうした欠点も、アルバム全体を覆う感情の深さと雰囲気の完成度の高さによってほぼ帳消しにされている。
楽曲「I Don’t Love」では、極端なリバーブ効果と静寂の対比が「ウォール・オブ・サウンド」の究極形として表現されている。一方、アルバム最後の楽曲「Earthmover」は、重厚かつ美麗なエンディングでリスナーに深い印象を与える。また、「Who Would Leave Their Son Out in the Sun」では、リバーブを駆使したゴージャスなサウンドが堪能できる。
2019年、バンドはこのアルバムをオランダのRoadburnフェスティバルで完全再現演奏するなど、作品の評価と人気は現在でも高まり続けている。本作は、限られたリソースの中で新しい音楽の地平を切り拓いた作品として、多くのアーティストや音楽ファンにインスピレーションを与え続けている。
『Deathconsciousness』は、感情的に強烈で、音楽的・哲学的に深みのあるアルバムだ。その粗削りながらも洗練された音楽はリスナーを独特の雰囲気に浸らせ、孤独感や人間の終末論的なテーマについて考えさせられる。発売から15年以上が経過した現在でも、このアルバムが与える影響とその神秘性は色あせておらず、真に特別な存在となっている。
トラックリスト
The Plow That Broke the Plains
1 A Quick One Before the Eternal Worm Devours Connecticut
2 Bloodhai
3 The Big Gloom
4 Hunter
5 Telephony
6 Who Would Leave Their Son Out in the Sun?
7 There Is No Food
The Future
1 Waiting for Black Metal Records to Come in the Mail
2 Holy Fucking Shit: 40,000
3 The Future
4 Deep, Deep
5 I Don’t Love
6 Earthmover

