
解説
JPEGMAFIAとダニー・ブラウンが初めて共同制作した14曲入りのアルバム『SCARING THE HOES』は、両アーティストの実験的で混沌としたサウンドが光る作品。全ビートをSP 404で制作し、ゲストには若手アーティストのredveilを1曲で迎えている。このプロジェクトは、2022年の初公開から数年の歳月をかけて完成した。
アルバム名に込められたユーモラスで皮肉なタイトルは、混沌とした音楽スタイルを象徴しており、難解で予測不能なサウンドが中心。JPEGMAFIAのグリッチなプロダクションと型破りなビートに、ダニー・ブラウンの独特な鼻声とフロウが見事に融合している。両者がキャリアを通して培ってきた実験精神が集約され、アンダーグラウンドヒップホップの枠を広げる意図が明確に現れている。
アルバムには多種多様な音楽要素が詰め込まれており、たとえば「Lean Beef Patty」は政治的なパンチラインで始まり、グリッチ処理されたサンプルが強烈なビートに重なる。「Fentanyl Tester」ではケリスの「Milkshake」を大胆に再構成。一方、「Kingdom Hearts Key」ではアニメ楽曲を引用し、若きredveilの登場も印象的だ。クラシックな要素を背景にしつつ、挑発的で現代的なセンスを見せつける。
このアルバムは実験的かつ攻撃的なサウンドが中心だが、キャッチーなフックと巧みなパフォーマンスにより、意外性の中で魅力を発揮している。DIYな美学とノイズの多いビートがアルバム全体に緊張感をもたらしながらも、場面によっては洗練された一面も見せている。ダニーとジェイペグの相性の良さがアルバムの強みであり、お互いの個性を高め合う形で傑作を生み出している。
ジャンルの境界を越える革新性と混沌を持ちながら、緻密に計算されたアルバム。2人のベテランアーティストが築いた異なる世界観の結合は新たな音楽体験を提供する。挑戦的で破壊的な美学を通じて、聴く者に驚きと刺激を与える作品だ。
トラックリスト
1 Lean Beef Patty
2 Steppa Pig
3 SCARING THE HOES
4 Garbage Pale Kids
5 Fentanyl Tester
6 Burfict!
7 Shut Yo Bitch Ass Up / Muddy Waters
8 Orange Juice Jones
9 Kingdom Hearts Key
10 God Loves You
11 Run The Jewels
12 Jack Harlow Combo Meal
13 HOE (Heaven on Earth)
14 Where Ya Get Ya Coke From?

