
解説
JPEGMAFIAの3枚目のアルバム『All My Heroes Are Cornballs』は、2018年の傑作『Veteran』に続く実験的な作品である。リリース前には、ケニー・ビーツやジェイムス・ブレイク、slowthaiといったアーティストに試聴され、ユニークなプロモーション映像で注目を集めた。このアルバムは、ドレイク的な洗練されたポップとは真逆の混沌とした音楽世界を構築し、多彩な音楽性と挑発的な歌詞が印象的だ。
本作はJPEGMAFIAの象徴的なユーモアと鋭い批評精神を保ちながら、新たな深みを加えている。「Jesus Forgive Me, I Am a Thot」では、不協和音と美しいピアノを組み合わせ、ポップと実験性を調和させた。「Kenan Vs Kel」や「Beta Male Strategies」では静寂と激しいパンク的要素が交錯し、聴衆を驚かせる構成が光る。また、敵対的で鋭いラップと繊細なシンセサウンドが共存し、カオスの中にも計算された芸術性を感じさせる。
批評家たちは、JPEGMAFIAのジャンルを超越した音楽性を称賛している。彼の音楽はインターネット時代特有の分断的な文化を反映し、突発的な感情の変化や仮面を被ったアイデンティティの探求を音で表現している。その一方で、「PRONE!」や「Basic Bitch Tear Gas」のようにポップ的なフックや親しみやすいメロディも散りばめられ、反骨的でありながらも聴きやすさを兼ね備えた作品となっている。
本作は、彼が破壊的で挑戦的な姿勢を維持しながらも、より内省的で感情に触れる瞬間を持ち合わせる完成度の高い作品と評価される。一部では『Veteran』ほどの直接的なインパクトを欠くとされるが、それ以上に構築美や繊細な作り込みが評価されている。リスナーを予想外の展開に引き込みながら、彼の感情的で政治的なメッセージを見事に伝えている点が魅力だ。
スプートニクミュージックは、アルバムが緊張と解放の対比に基づく構成でリスナーを圧倒しつつ、彼の音楽的スキルが引き立っていると指摘。どの曲も洗練された構造を持ちつつも、不快感と美的快楽の境界線を歩む。一方で、彼の反主流文化的な歌詞は一部のリスナーにとって過激に映る可能性があり、その点が賛否を分ける部分でもある。
最終的に『All My Heroes Are Cornballs』は、JPEGMAFIAが進化を続けながらも独自性を保つ姿を示す傑作である。エネルギッシュで多面的なこの作品は、何度も繰り返し聴くことで新たな発見が得られる、緻密に作り込まれた音楽体験だ。
トラックリスト
1 Jesus Forgive Me, I Am a Thot
2 Kenan Vs. Kel
3 Beta Male Strategies
4 JPEGMAFIA TYPE BEAT
5 Grimy Waifu
6 PTSD
7 Rap Grow Old & Die x No Child Left Behind
8 All My Heroes Are Cornballs
9 BBW
10 PRONE!
11 Lifes Hard, Here’s a Song About Sorrel
12 Thot Tactics
13 Free the Frail
14 Post Verified Lifestyle
15 BasicBitchTearGas
16 DOTS FREESTYLE REMIX
17 BUTTERMILK JESUS TYPE BEAT
18 Papi I Missed U

