監督 スタンリー・キューブリック
脚本 スタンリー・キューブリック
カルダー・ウィリンガム
ジム・トンプスン
原作 ハンフリー・コッブ
製作 ジェームズ・B・ハリス
カーク・ダグラス
スタンリー・キューブリック
音楽 ジェラルド・フリード
撮影 ゲオルク・クラウゼ
編集 エヴァ・クロール
配給 ユナイテッド・アーティスツ
主演 カーク・ダグラス
ラルフ・ミーカー
アドルフ・マンジュウ
1957年 87分
解説
『突撃』(1957)は、スタンリー・キューブリックの監督作品の中でも、権力、戦争、道徳、そして人間性の問題に鋭く切り込んだ重要な作品である。この第一次世界大戦を題材とした映画は、無意味な戦略のもとで命を散らす兵士たちと、それを指揮する腐敗した将校たちを描いている。
物語の焦点は、フランス軍の将軍ミローが自軍の兵士に不可能な作戦を命じ、その失敗の責任を部下に押し付ける中で発生する軍法会議に据えられている。主人公であるダックス大佐(カーク・ダグラス)は、臆病罪で起訴された3人の兵士たちを弁護するが、その結果は悲劇的に終わる。このストーリーは、指揮官の権力乱用、組織の責任逃れ、そして兵士個人の尊厳が犠牲にされる現実を容赦なく描き出している。
映画の構成にはキューブリックの精密さが光っており、特に戦場のシーンでは長回しが用いられ、塹壕の緊張感や泥臭い現実が鮮烈に表現されている。撮影はモノクロで行われており、その視覚的効果は戦争の無機質さを際立たせている。観客は、進撃中の兵士たちとともに塹壕や爆撃の現場を目撃し、その中で繰り広げられる人間ドラマに心を揺さぶられる。
批評家たちは本作を、キューブリック作品の中でも最も人間味があり感情的な作品だと評価している。一方で、本作は戦争を糾弾する反戦映画であると同時に、戦場のドラマ性を強調する表現が矛盾を孕んでいるとの指摘もある。このジレンマは、戦争の醜悪さとその背後にある人間の悲哀を観客に改めて考えさせる。
『突撃』は、キューブリックが戦争映画の枠を越えて、人間の行動や組織の不条理さを表現し、映画という媒体の可能性を極限まで追求した代表作である。そのリアリズム、感情深さ、そしてテーマの普遍性により、長く記憶に残る名作と位置づけられる。

