監督 スタンリー・キューブリック
脚本 ダルトン・トランボ
原作 ハワード・ファスト
製作 エドワード・ルイス
製作総指揮 カーク・ダグラス
音楽 アレックス・ノース
撮影 ラッセル・メティ
編集 ロバート・ローレンス
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
主演 カーク・ダグラス
助演 ローレンス・オリヴィエ
1960年 186分
解説
1960年に公開されたスタンリー・キューブリック監督の映画『スパルタカス』は、古代ローマで起きた奴隷反乱を題材にした壮大な歴史ドラマである。剣とサンダルのジャンルを刷新し、権力への抵抗や人間の尊厳をテーマに、観る者を圧倒した。
キューブリックは途中から監督に就任し、技術的側面を担う依頼監督としての立場だったが、本作には彼らしい要素が随所に反映されている。戦闘や訓練の場面のリアルさ、壮大な映像美、そして人間性の欠如への鋭い視点がその特徴である。
主演のカーク・ダグラスは、奴隷軍の指導者スパルタカスを力強く演じた。彼の演技は情熱的で説得力があり、観客に強い印象を残した。また、製作を担ったダグラスは、ハリウッドのブラックリスト下で追放されていた脚本家ダルトン・トランボを起用し、彼の名前をクレジットに記載することで、ブラックリストの崩壊に大きく貢献した。トランボの脚本は、暴力的で不条理なローマの権力政治を皮肉たっぷりに描いている。
本作の真骨頂はローレンス・オリヴィエ、チャールズ・ロートン、ピーター・ユスティノフら英国人俳優陣の名演技にある。オリヴィエが演じた残酷で冷酷なクラッスス、ロートンの老練な共和党上院議員、ユスティノフの人間味豊かな奴隷商人が、それぞれ強烈な個性を発揮した。特に、ロートンとユスティノフによる知的な会話シーンは、作品の中でも秀逸な場面として知られる。
クライマックスの奴隷軍とローマ軍団の戦闘シーンは、圧倒的なスケール感と迫力を持ち、観客の目を釘付けにした。この場面では1万人以上のエキストラが参加し、古代ローマの戦場が息を呑むほどリアルに再現された。また、剣闘士の訓練場面では、人間が機械のように鍛え上げられる様子が描かれており、後のキューブリック作品に通じるテーマを垣間見ることができる。
1991年には修復版が公開され、性的暗示や暴力的な場面が復元された。オリヴィエが演じるクラッススとトニー・カーティスが演じる奴隷との親密なやりとりなど、当時の検閲でカットされたシーンが復活し、作品のリアリズムがより鮮明になった。この修復により、『スパルタカス』は成人向けのリアルな感覚を伴う作品となり、その後の歴史スペクタクル映画にも影響を与えた。
『スパルタカス』は宗教的な要素を排除し、個人と集団の自由への希求を描く物語である。このリベラルなテーマは現代においても共感を呼び、政治的・社会的な文脈で評価されている。本作は『ベン・ハー』や『グラディエーター』といった後続作品への道を切り開き、古代ローマを舞台とした映画の新たな基準を確立した歴史的な意義を持つ作品である

