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Kendrick Lamar GNX

解説 ケンドリック・ラマーのアルバム『GNX』は、彼にとって重要な転機を迎えた6枚目の作品であり、トップ・ドッ…

解説

ケンドリック・ラマーのアルバム『GNX』は、彼にとって重要な転機を迎えた6枚目の作品であり、トップ・ドッグ・エンターテイメントを離れ、自身のレーベルpgLangから初めてのリリースとなった。アルバムのリリースは予告なしで、突然ネットに登場し、ファンとメディアを驚かせた。アルバムのタイトル「GNX」は「Grand National Experiment」の略で、彼のルーツを象徴するビュイック87年式モデルに触れ、また家族への敬意を表現している。

このアルバムは、ケンドリック・ラマーが自身の音楽とアーティスト像を再構築する強い意志を反映しており、以前の複雑な内省的な表現から、よりポップでキャッチーな方向に進んでいる。アルバム内では、リル・ウェインやドレイクを批判し、西海岸特有のGファンクサウンドやエレクトロニックな要素を取り入れている。「Wacced Out Murals」や「Squabble Up」など、彼の独特な詞とメロディアスなサウンドは、多くのディスや隠喩が込められた作品として知られ、リスナーにはその細部まで掘り下げた解析が求められる。

また、このアルバムはケンドリックが彼の出身地カリフォルニアの若手アーティストたちにもスポットライトを当てる姿勢を示し、アルバムに参加したローカルアーティストたちが魅力的なパフォーマンスを披露している。ケンドリックはまた、ドレイクとの確執に続くラップ界のビジョンを描きながら、アルバム内で「戦争から平和へ」の転換を模索する。それは、従来の激しいラップバトルの枠を超えて、自らの哲学を次世代に語りかけるような形となった。

アルバム全体では、恋愛や家族に対する愛情が主題に現れることもあり、「Luther」や「Gloria」ではソウルフルな雰囲気を漂わせつつ、感情的な面を重視している。スヌープ・ドッグやリル・ウェイン、そしてSZAなどのアーティストとのコラボレーションも、本作における音楽的な多様性を反映している。ケンドリックは過去と未来を結びつける音楽を作り、彼自身のビジョンと物語を追求している。

『GNX』は、ただのアルバムではなく、ケンドリック・ラマーのアーティストとしての成長を見せる作品であり、彼がラップ界の未来にどう貢献しようとしているのかを示す非常に重要なマイルストーンとなった。この作品の解釈は多岐にわたり、リスナーにとって挑戦的でありながらも、豊かな聴取体験を提供している。

トラックリスト

1 wacced out murals
2 squabble up
3 luther
4 man at the garden
5 hey now
6 reincarnated
7 tv off
8 dodger blue
9 peekaboo
10 heart pt. 6
11 gnx
12 gloria