解説

フランク・オーシャンは、Island Def Jamからソロ作品のリリースを拒否された不満を背景に、2011年にミックステープ『nostalgia, ULTRA』を無料公開。この動きが彼を注目の的とし、デビューアルバム『channel ORANGE』制作の道が開かれた。アルバムは彼の個人的な経験を基に、セクシュアリティを含む率直なテーマを探求しており、彼が男性への愛を公表した声明がその背景にある。

制作は主にMalayをはじめとするミュージシャンやプロデューサーと共に進行。マーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーを彷彿させる1970年代風R&Bのスタイルを取り入れつつ、オーシャン独自の大胆なサウンドを構築した。サンプルより楽器演奏に重点を置き、Earl Sweatshirtやアンドレ3000らの参加がアルバムの多様性を高めた。

『channel ORANGE』は、リリース直後から批評家や商業的に高い評価を受け、「Thinkin Bout You」や「Bad Religion」、「Pyramids」などが特に賞賛された。批評家たちはアルバムの壮大なスケール、詩的な歌詞、そして予測不可能な楽曲構成を称賛。物語性があるとともに、サウンドは時にミニマルでありながら壮大。複雑な個人の感情が絡み合ったアルバムは、聴くほどに新たな発見を提供する。

『Pyramids』は、9分間にわたり古代エジプトと現代ラスベガスを対比する野心的なトラックで、アルバムのハイライトとされた。他にも「Lost」「Super Rich Kids」などが豪華なアレンジと内省的なテーマで注目された。一方、オーシャンのセクシュアリティへの関心も広がり、R&Bやヒップホップ界でタブーとされがちなテーマを直面化させた。

ガーディアンやニューヨーク・タイムズは、彼のセクシュアリティの公表をリスクの高い行動として賞賛しながら、その音楽的革新がそれを凌駕するとした。「Bad Religion」「Forrest Gump」など、同性への愛をテーマに含んだ楽曲は、宗教、欲望、個人的な葛藤を詩的に描き、多くの共感を呼んだ。

フランク・オーシャンはメインストリームR&Bの既成概念に挑戦し、スティーヴィー・ワンダーやプリンスに例えられるも、そのスタイルはより自己表現的で前衛的。音楽界におけるゲイ・アイコンとしての存在が確立し、キャリアの新たなページを開いた。同時に、アルバムはリスナーに純粋な音楽体験を提供し、オーシャンのアーティストとしての真価を証明している。

最終的に、『channel ORANGE』は2012年の音楽界のハイライトとなり、多くの年間ベストリストに選出された。彼の音楽性と率直さは、R&Bだけでなく音楽そのものの枠を広げ、オーシャンが次世代のソウル・アーティストとして地位を確立した瞬間だった。

トラックリスト

1 Start
2 Thinkin Bout You
3 Fertilizer
4 Sierra Leone
5 Sweet Life
6 Not Just Money
7 Super Rich Kids
8 Pilot Jones
9 Crack Rock
10 Pyramids
11 Lost
12 White
13 Monks
14 Bad Religion
15 Pink Matter
16 Forrest Gump
17 End