
解説
ジョーディ・グリープがリリースした初のソロ・アルバムは、ブラック・ミディの活動休止後に発表された作品で、ラテンやサルサの影響が色濃く反映され、彼の音楽性の多才さを鮮やかに表現している。このアルバムは、ブラジルや他国で地元ミュージシャンと即興的に作曲・録音を行うことで生まれ、生々しく活気に満ちた作品に仕上がっている。テーマとしては、前作『Hellfire』のダークな側面とは異なり、情熱や愛を中心に据えつつも、グロテスクなひねりが加えられている。
音楽スタイルは多様で、サルサ、ジャズ、ボサノヴァ、ショーチューンといったさまざまなジャンルが巧みに融合している。特に「Holy, Holy」と「Blues」の2曲は、アルバム全体のダンサブルなトーンを象徴する楽曲で、ラテン音楽のエネルギーを存分に活かしている。また、昔の音楽スタイルを再文脈化し、新たな響きを生み出す実験的なアプローチが特徴だ。
グリープの歌詞は奇妙でグロテスクなキャラクターやストーリーテリングを通じて物語性を高めており、その風変わりなボーカルスタイルは「牧師」「バッグス・バニー」「競売人」を彷彿とさせるものとして注目されている。制作にはブラジルのミュージシャンを含む20人以上のゲストが参加し、アレンジの多彩さを際立たせた。
アルバムの中でも、「The Magician」や「As If Waltz」といった楽曲が高く評価され、深い叙情性と卓越した作曲スキルを見せつけている。アルバムの最後を飾るのは、フランク・シナトラの「If You Are But A Dream」のカバーで、幻想と儚さをテーマにした作品の締めくくりとして秀逸だ。
このアルバムの核心は、世界各地を舞台にした制作環境とジャンルを超えた音楽の融合にある。批評家たちは、ジャンルの革新性やブラック・ミディ時代とのギャップ、独自性に満ちたアプローチを称賛している。ブラック・ミディを離れた後も、過去の影響を感じさせつつ新たな音楽的方向性を探求している点が顕著である。
歌詞と物語性の深化は、『Hellfire』以降の進化を示しており、ミュージカルシアターからの影響を受けた劇的な表現や風刺的要素が随所に見られる。さらに、軽妙なユーモアと批判精神がアルバム全体を通して貫かれている。ジャズ・フュージョン要素においては、カシオペアやマイルス・デイヴィスの影響が随所に感じられる。このソロアルバムは、グリープの音楽家としての成長と挑戦を示す画期的な成果であり、その革新性と独創性は今後の活動への期待を大いに高めるものとなっている。
トラックリスト
1 Blues
2 Terra
3 Holy, Holy
4 The New Sound
5 Walk Up
6 Through a War
7 Bongo Season
8 Motorbike
9 As if Waltz
10 The Magician
11 If You Are But a Dream

